東雲の支配者
陽咲の笑顔がなぜかとても切ないのは、秋の海のせいなのか。
今の私にはわからない。

「踊ろうか。」

「はいっ?」

「踊ろう!」

そう言って陽咲は突然立ち上がった。
そして、しなやかでキレのある動きでフラメンコを踊り出した。
私はしばらくその様子を呆然と見ていた。
そのうちにだんだんおかしくなってきて、思わず吹き出す。
いくら美しい人でも音楽もなしで海辺でフラメンコを踊る姿なんて、よく考えると変だ。
いや、変過ぎる。

「ほら、亜夕も一緒に!」

私は少しためらうも、陽咲があまりにも楽しそうに踊るので自然と体が動き出す。
けど、今までダンスなんてした事がない私は、陽咲のように器用に踊る事なんて出来るわけもない。
気が付くと私はテレビで見た事があるツイストを記憶を辿り見様見真似で踊っていた。
私達は夢中で踊った。
すると突然陽咲が砂浜に寝転がりお腹を抱えて笑い出す。


< 44 / 80 >

この作品をシェア

pagetop