東雲の支配者
「あのピエロが面白くて目が離せないの。」

私がそう言った瞬間、突然背後に人の気配を感じた。
振り返ると、そこにはさっきまで陽気なステップを踏んでいたピエロが立っている。
そしてものすごい剣幕でこう言った。

「君はここにいるはずのない人間だ。なぜここにいる？」

「えっ？」

「東雲の向こうに出口はある。そこに向かって走れ。」

そう言うとピエロは私の背中を勢い良く押した。
すると陽咲が突然私を抱き寄せこう言った。

「道化師さん。この娘がここにいるのはデーテの陰謀だ。悪いが言いたい事があるならデーテに言ってくれないか。」

「デーテ…。あの性悪な支配者め。」

そう言い残し、ピエロは何事もなかったかのように元の場所で風船を配り始めた。

「陽咲、あのピエロは一体何者なの？デーテという人は、支配者なの？」

「あの人はデーテが大切に育てた息子の一人だよ。だから悪い人じゃない。ただ、人よりほんの少し感が効くだけさ。感が効く連中の中にはデーテを支配者だと言う人も
いる。まあ、確かにそうなのかもしれないね。」

そう言うと陽咲はニヤリと笑みを浮かべた。




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