東雲の支配者
バチンッ。

母は何も言わずまだ幼い私の頬を叩いた。

「こんな真冬にジュースなんかこぼしたら乾かないでしょ!どうしてあんたはいつもそうなの!」

母は大きな声で吠えると、赤く腫れ上がった私の頬を力いっぱいつねった。
そして頬を引っ張ったまま私は押入れに連れて行かれ、真っ暗な狭い押入れの中に突き飛ばされる。

「落ち着きのない子なんて大嫌い!そんな子はもういりません!その中で大人しくしてなさい。騒いだらもう出してあげないからね。」

母はそう言うと押入れの戸を強く閉めた。
押入れの中の私は大声で泣いている。

「怖いよ、ママ、開けて!」

「うるさい!騒ぐな!」

その光景を見ていた私は、言葉を失い、とても悲しい気持ちになった。
こんなに小さい頃から私は愛されていなかったんだ。
こんな鬼畜に私は育てられたんだ。
そんな事を考えているうちに、気が付くと私は元のデーテの家の床にしゃがみ込んでいた。
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