東雲の支配者
家に帰ると、母はリビングでビールを飲んでいた。
この日を境に、母は私と口をきいてくれなくなった。
そして一切の家事を放棄し、家はめちゃくちゃに散らかっていた。
けど、私は少しも動じる事なく普段通りの生活を続けた。
なぜなら、こういう状況は多々ある事だから。

それから一週間ほど経ったある日。
学校帰り、いつものように校門までの道のりを一人で歩く。
桜はもうとっくの昔に散り果てた。
道の端に溜まる土と混ざった無様な花弁を見下ろす。
そして私は綺麗な物が一生そのままの状態である訳ではないという事を改めて確認すると、自然と笑みがこぼれた。

「さよなら…。」

無意識で出た言葉に戸惑うも、私は表情を変える事なくまた歩き出す。

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