東雲の支配者
雨音に連れられ、二階にある私がデーテに引き取られる前まで泊まっていた部屋に入る。

「ここで待ってろ。」

雨音はそう言うと険しい顔で部屋を出た。
なんだか怖かった。
なぜなら、こんな密室で男の人と二人きりになるのは初めてだ。
いっその事逃げてしまおうかと考えた次の瞬間…。

「待たせたな。」

仁王立ちする雨音は、肩に大きな斧を担いでいる。
心の中で私は、終わったな、そう思った。
すると…。

「ほらよ。このくらいの重さなら持てるだろ。」

雨音は私に斧を渡してきた。

「えっ?これで何をすればいいの?」

「壊すんだよ。これを。」

そう言って雨音は部屋の押入れを指差した。

「お前の辛い記憶ごと、派手にぶっ壊しちゃいな。」

そう言って雨音は押入れの戸を斧で叩き割った。

「…貸して!」

私は夢中で押入れを破壊した。
斧の重さも感じないほど夢中で。
そして私は一時間かけて押入れを完全に破壊した。

「はぁ、はぁ…。腕痛っ。」

「見事だな。すっきりしただろ?」

「うん…。」

「忘れちまえ。楽しかった事以外。綺麗さっぱり。」

「うん…。ありがとう。」

「さっ、もたもたしてねーで逃げるぞ。こんな事したのばれたら怒られるし。まっ、その時はやったのはお前だって正直に話すけど。」

「はあっ?だって雨音が…。」

「いいから早く行くぞ。」

そう言って私達は朝屋を出た。
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