東雲の支配者
「行くんだ。」

陽咲はもう一度私の背中を押した。
私は前を見て歩き出す。
東雲に向かって、ゆっくりと。

歩いていると、ここで出会った人の事や、ここで起きた出来事一つ一つが脳裏を過る。
すると、東雲の光は私の涙で滲み、私は徐々に綺麗な桃色の世界に引き込まれていく。

「綺麗…。」

そう思った瞬間、私は忘れていた記憶を思い出す。

あの日私は、確かに思った。
命を絶とうと。
そんな私を、ここのみんなが救ってくれたんだ。
私は始めから一人じゃなかった。
孤独なんかじゃない。

「僕が守ってあげるから。ずっと一緒にいよう。」

「えっ?」

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