東雲の支配者
聞こえてきたのは、紛れもない悠太の声だ。
その瞬間、私は全てを思い出した。
そうか、あの日の約束を、悠太は今でも守り続けていたんだ。
小学校の頃、家の玄関の前で交わした約束をずっと覚えていてくれたんだ。
それに気が付いた瞬間、私の中で何かがこみ上げてくるのがわかった。

「悠太…!」

そう叫んだその時…。

「亜夕奈、亜夕奈!」

「えっ…悠太…?」

「大丈夫?」

気が付くと私はいつもの川原に倒れていた。
振り返ると、陽咲はもういない…。
私はあの日の夕方に戻って来たのだ。

「こんなところでいつまで寝てるんだよ!死んでるかと思って心配しただろ!」

「悠太、ありがとう。」

「はっ?なに、急に。」

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