東雲の支配者
私が必死で帽子を追い掛けている頃、土手の目の前のバス停に一台のバスが停まった。

「あれ、うちの学校の土田亜夕菜じゃね?」

「ほんとだ。なにあれ?一人で鬼ごっこでもしてんのかな?」

「やばくね?ほんと変な奴。」

その会話を聞いて、バスから勢い良く降りたのは悠太だ。
悠太は息を切らして私の元へ駆け寄る。

「おいっ、なにしてんだよ。」

私は足元に落ちた帽子を拾い、かぶると、何事もなかったかのように平常心に戻った。

「悠太。帽子がね、風で飛ばされたの。すごく心配になって追い掛けたんだけど…。遠くに行かなくて良かった。」

慌てて追い掛けたせいで、私の息は上がっていた。
そんな私をどこか悲しそうな表情で見つめる悠太。

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