杏子の墓(ラジオドラマ)
手紙を開ける音。
(若林のN)「若林さん遅くなりましたが」
杏子のナレーションが重なってくる。

(杏子のN)「念願の合格おめでとうございます。去年の暮れ、
桃山御陵の坂道を歩きながら、若林さんは一生懸命話してました。
今の僕には君に合う資格がないんだとか、世界に必ず飛び出すんだ

とか、自分の使命は何なのかとか、とても難しいお話を何度も繰り
返しておられました。下宿に上がってもらってから、卒業したら
どうするの?と聞かれて、登町小学校の先生になろうと思うのと

答えた時、若林君はとても喜んでくださいました。その後が変で
したよ。君のテニスは天使のようだ、涙が出るほど美しい、て
言われたのを憶えてますか?思わず私が吹き出したので気分を

害されたのでしょうか?すぐ帰られましたね。ごめんなさい」
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