兄妹芸人(仮)

「ね!明里!お笑いやろう!」


「嫌だ!」


「なんで?!お笑いやっていけば、ずーっと一緒にいられるんだよ?」


「逆になんでお前はそこを売り込めばあたしがつられると思ってんだよ?!」


「だって、一緒にいないと甘えられないでしょ?」


「だからあたしは甘えたいなんて思ってない!」


「違うよ!俺が甘えられたいんだ!」


「どう違うんだよこのポンコツ!」



ぎゃんぎゃん言い合っても埒があかない。

ポンコツの言い分がポンコツ過ぎて頭が痛くなりそうだ。


「あのー…お二人とも、白熱してるとこ 悪いんだけどさ、秋祭りはどうなったの?」


そこで口を挟んできた先輩。
いつの間にかお好み焼きは切り分けられて取り皿に乗せられていた。


「忘れてた!明里、出るよな?秋祭り。」


「…出たくない。」


「なんで…」



なんで?
そんなの、簡単だ。

もう一度ステージに立ってしまったら、たぶんあたしは帰ってこれなくなる。

お笑いの魅力に、捕えられてしまうと思うんだ。





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