兄妹芸人(仮)

「絶対、楽しいよ?」


あぁ、そうだろうな。


あたしはたぶん、もう気づいてる。

お笑いの魅力に。
ステージに立つ楽しさに。
拍手を浴びる高揚感に。


でも、それに気付いているからこそ、ダメなんだ。

慎太郎の飽き癖はあたしが一番よくわかってる。

今は良いかもしれない。
慎太郎も乗り気だし、みんなにも受け入れてもらえてるから。

でも、いつ飽きる?いつ飽きられる?


そんなん考えたら、このままお笑いの世界に素直にハマっていくことなんてできない。


一度快感を覚えてしまえば、それを手離せなくなる。




あたしはお笑いが好きだ。

人の前に出るのも、昔は好きだった。

人を笑顔にすることができる仕事は素晴らしいと思う。



今ならまだ”気のせい”で済ませることができるが、きっと、もう一度ステージに立ってしまえば、確信に変わるだろう。


飽きたから辞めると言われても、きっとその頃にはもう抜け出せないほどハマってしまっている


だから、引き返すなら今なんだ。




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