兄妹芸人(仮)
「え、あの、じゃあ今回の祭りのことは…」
「娘に話は聞かされてたからね、そんなに人気があるならぜひ祭りのステージを盛り上げてもらおうと思って、お兄さんに頼んだんだよ。」
「そういうことだったんですか…」
実行委員に直々にお願いされてたなら慎太郎が断るわけないか…
「妹の意見もきくから少し待ってくれって言われてたんだけど、いい返事が聞けてよかったよ。」
にこりと笑って厨房のほうへもどっていく福井さん。
慎太郎の方を見ると、いたずらがばれた子どものようにぱっと目をそらす。
ちゃんと、あたしの話も聞こうとしてくれたんだね。
「慎太郎?」
名前を呼べば、ピクリと肩を揺らし、おずおずと視線を合わせてくる。
なんだその捨てられた子犬のような目は。
「ちゃんとあたしの話も聞いてくれて、ありがと。」
「……うん!」