兄妹芸人(仮)
「明里くん明里くん。」
放課後の教室でネタ合わせしているあたしたちを横で観察していた二階堂先輩。
この人、受験生なのに大丈夫?ってくらいかなりの頻度で練習に顔を出してくれる。
でもまあ、お笑い好きなだけあって、的確な意見を言ってくれるから正直ありがたい。
「なんですか?どこか変でした?」
「あ、いや、なんか今日ぎこちなくない?」
「ぎこちない?」
「…もしかして明里、昨日の打ち合わせで緊張しちゃった?」
あたしの隣に立つ慎太郎が不安そうにこちらをうかがっている。
…これじゃまるで文化祭の時の再現じゃないか。
「あー、昨日役員と打ち合わせだったんだもんね。なんか言われたの?」
「それがですねー、当日カメラが入るらしいんですよ。地方テレビのなんですけど。
それで、ステージMCをそのテレビ局のアナウンサーがやるんだそうです。」
「なるほど。二回目にして早くもテレビデビューってわけね。」
「明里、ただでさえ人前に出るの嫌いなのに、テレビなんて言ったら緊張しちゃうよね?」
「…べ、別に緊張なんかしてないから。第一、本番まであと5日もあるのに今から緊張なんてするはずないじゃん。」