兄妹芸人(仮)
「そんな無駄な話してないで練習。慎太郎のボケはあざとすぎて笑えない。もっとスマートにボケて。」
「うーん難しいこと言うなぁ…」
「いや、でも言ってることはわかるよ。あんまり今ボケてます感出しちゃうと、お客さんちょっと引いちゃうかも。」
そうして真剣に話し合いを始める二人を見て、話題転換が完了したことを確信する。
……緊張か。
そりゃ緊張もするでしょ。
この2人でステージに上がることになって、まだ2回目なんだよ。
どれだけ練習しても、どれだけ自信をつけても、本番になったら何が起きるかわからない。
それは、この身をもって嫌というほど理解している。
文化祭の時もそうだったじゃないか。
前はこんなに緊張しいじゃなかったんだけど…やっぱ、アレがまだトラウマになってるってことなんだろうな。
もういい加減吹っ切りたいのに。
「二人はこの後お家で練習?」
「その予定ですよ?」
「オレも行っていい?」
「我が家にですか?別にいいですけど、なんでですか?」
「いやー今日うちの親いなくてさ、ご飯作ってくれる人がいないわけよ。」
「うちの夕食をたかろうってんですか。潔くポンコツですね。もっと遠慮ってもんを身につけてください。」