兄妹芸人(仮)
「でも、あんな楽しそうだったのに…」
「俺なんかより、明里のほうが楽しそうにやってたよ。俺は楽しそうな明里を見て楽しんでたんだから。」
「それってどういう…」
「この間も言ったでしょ?俺と一緒に楽しそうにしてくれる明里を見ると、お兄さんはとてもうれしいのですよ。」
「……なんだそれ。」
「ふふっ だから、また明里と同じステージに立てるようになって、お兄さん感激なの。」
たしかに、種類は違うけど“同じ”ステージ。
あの時と同じ。
隣には慎太郎がいて、あたしが一人で頭悩ませてる時も、横でアホみたいに笑顔でいてくれる。
「大丈夫」だと言ってくれる。
だからあたしも安心して頑張れるのかもしれない。
この間の文化祭でも台本は飛んだけど、何とかなった。
もうあの頃とは違うのかもな。
パニックになって立ち尽くしてしまったあの頃とは。
ちゃんと隣に慎太郎がいてくれるから。
「あたしも、うれしい。」