兄妹芸人(仮)
会場がざわつく中、ステージにゆるキャラだけ残し、ステージ袖へと運び込まれたアナウンサー。
救護担当の看護師が到着し、ステージ袖も慌ただしい空気が流れる。
「ステージ、どうしましょう?!いったん止めますか?」
「いや、次の企画にいってその間に対処しよう。太鼓の準備は終わってるんだ。」
「でも、今出てるキグルミしゃべれない設定ですよ?」
「そこはなんとなくジェスチャーでなんとかしよう!保存会のみなさん、準備お願いします!」
という、なんともテキトーというか、キグルミって言っちゃったよこの人というか、そんな会話がなされて太鼓保存会の人たちがステージへと出ていった。
キグルミさんはどうやってその間つないでいたのかは見ていなかったが、中の人がものすごく泣きそうな顔をしていたため、相当しんどかっただろうことは伝わった。
太鼓演舞の最中、アナウンサーは今朝から高熱を出していたことが発覚し、MC続行は無理だと判断されたが、じゃあこの先どうやって進めるんだという話に。
代わりにアナウンサーをと思ったが、この祭りには少数精鋭で来ているらしくアナウンサーは一人だけ。
他のアナウンサーを呼ぶにも、こうも急じゃ代役を立てるのは難しいと。
太鼓保存会の演舞はもうすこしで終わってしまう。
またキグルミさんに一人奮闘してもらうのはあまりに可哀想だ。
「じゃあ、俺らが代役やりましょうか?」
「……は?」
実行委員会のみなさんが眉間に皺を寄せて唸っている中、あたしの横から何とも気の抜けた声が響いたと思ったら、その内容は、ただの爆弾だった。