兄妹芸人(仮)

「は、おま、素人にアナウンサーの代役なんて…」


「大丈夫!明里の方があの人より可愛いから!!」




今それ関係ねぇだろうが、つか可愛いとか言うな、そしてなにが大丈夫なのかさっぱりわからないんですけど明里さん、などその他もろもろの文句を口にする前に、実行委員の福井さんの「それはいいね!ぜひお願いしたい!」という言葉が聞こえてきてもう本当にダメだと思った。



そしてそこで、太鼓の音が止み、かわりに会場からの拍手が響いてきた。

終わってしまった。




福井さんの言葉を聞いたテレビ局関係者は、あたしたちにマイクを渡し、肩を少し強めに叩いた。


まるで、「頼んだぞ」と言わんばかりの笑顔を添えてだ。




「明里!行こう!」



え、ちょっと待ってよ、台本とか段取りとか…てかまだやるなんて一言も言ってないんですけど?!



「やだよ!行かない!あたしたち自分たちのことでいっぱいいっぱいでしょ?!」



腕を引く慎太郎に負けないように、必死に足を踏ん張った。


心の準備もリハーサルもなしにステージに上がったら、どうなるかわからないよ!



自分たちのステージさえまだ終わってないのに!!



「大丈夫!俺に任せてよ!」


「任せられるか!余計不安だ!」


「大丈夫だって!てか俺もう半分ステージに体出ちゃってるし!お客さんから丸見えだよ!」


「知らねーよ!あたしはまだ出てないんだから、お前一人で行け!」


「やだよそんなの!俺の隣には明里がいないと!」





「お、お前、今それ言うのはズルいだろ馬鹿!!」





そんなこと言われたら行かなきゃなんなくなるだろうが!!









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