兄妹芸人(仮)
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「えー…っと、ですね、みなさんなんでお前らみたいなのが急に仕切りだしてんだよオイとか、思っているとは思いますが、こちらも完全なる予想外の展開ですので、少々このつたない進行役にご協力願えますか?」
太鼓保存会の人たちをはけさせた後、変な間が空いてしまったため、途端に勢いがしぼんでしまったあたし。
こういうつなぎって意外と難しいんだな。
「明里くんがんばってー!」
「慎太郎しっかりしろよー!」
あたしの言葉に、拍手をしてくれる人や、大きな声で叫んでくれる人。
明里くんって聞こえた気がするけど、今はスルーだ。
敵に囲まれてるわけじゃない、味方だっている、慎太郎も横にいる。
これなら、なんとかなるかもしれない。
「はい、じゃあ、はじめましての方もたくさんいらっしゃると思うので、まずは自己紹介から始めたいと思います!」
そこで慎太郎を見ると、なんだか嬉しそうに顔を緩めている。
何その顔。しまりのない顔しやがって。
「これ、相方兼兄の慎太郎です。良いのは顔と愛想だけ。必要な頭のねじが何本か抜けていて、こんな緊急事態だってのに楽しそうにニヤニヤしちゃうポンコツな相方で困ってるので、誰かなんとかしてくださいません?」
そんなしまりのない顔には笑顔で腹パンチだ。
「任せろ」って言わなかったっけ?
それならしっかり仕事してよね。