兄妹芸人(仮)
「なんだいネコさん?どうしたの?」
慎太郎が不思議そうに話しかけるが、このネコさんは残念ながら喋れない設定だ。
最近は喋れる着ぐるみもいっぱいいるんだから、いっそのこと喋っちゃえばいいのに。
「あ、一人だけのけ者にされたから怒った?話しにまぜろやーいみたいな?」
喋れないネコさんの考えを慎太郎が当てにいくが、ネコさんはでかい頭をブンブンと横に振る。
残念、はずれだ。
「すみません会場のみなさん。少々この茶番にお付き合いください」
やれやれというジェスチャーをつけて、申し訳ない顔で仕方なく会場に呼びかけると、みんな笑ってくれたからよかった。
優しいお客さんだなぁ。
「じゃあ、なに二人でラブラブしてんねーんってこと?」
先ほど以上に首を振る。
「ラブラブなんかしてないだろ」
「じゃあなんだって言ってるのさ?あ、ネコさんもちりめんじゃこの一員になりたいねーんってこと?!トリオになる?」
なんとも検討外れなことを言うポンコツにキレたのか、ネコさんはゆるキャラにあるまじき行動にでた。
「あぅち!」
それはそれは華麗な裏拳をポンコツにお見舞いしたのだ。
着ぐるみによって柔らかくなった拳は、そんなに痛みを与えることはなかったようだが、ゆるキャラが全然ゆるくない行動にでたことは、会場に衝撃と笑いを与えてくれた。
ゆるキャラにツッコミをさせるとは、慎太郎もなかなかやるなあ。
「今のはわかったよ!なんでやねーんってことだよね!」
その言葉に、ネコさんもあたしも頭を抱えてしまった。
打ち合わせなしにもかかわらず同じポーズをしてしまったのは少々恥ずかしいが、お客さんが笑ってくれたからそれも良しとしよう。