兄妹芸人(仮)
その後、無理やりポンコツを引きずり舞台袖へ引っ込んだ。ネコさんには一言「ちょっとつないでおいて」とだけ言い残した。中の人が絶望したところであたしは何も困らない。
「慎太郎くん。君はネタをやる気があるんですか?ないとか言ったら殴りますよコラ。」
「Yes一択の質問だね!」
「やんの?やんないで殴られるの?どっち?」
「やるに決まってるじゃん!なに言ってるの明里ってば!」
「じゃあふざけてないでちゃんと進めろポンコツが。」
「痛い!結局Yesでも殴られるのね!」
ふざけてる慎太郎が悪い。
あたしたちは今日ここに何をしに来たんだ。
ネタをやりに、お客さんを笑顔にするために来たんだろうが。
「よし、行くぞ。ネタやんぞ。」
「もちろん!行こう!」
そして再びポンコツを引きずって舞台の上へ。
この間わずか20秒。
周りで祭りの実行委員がガン見していたが、全くもって問題ない。
あたしたちがネタをやることに変わりはない。
ステージに戻るとネコさんが前転をしていた。
すげえなおい。ネコさんのポテンシャルの高さにびっくりだ。正確にはネコさんの中の人のだけど。
「よし!ネコさんはそのまま前転で袖に引っ込んでなさい!」
それを聞いてスピードアップした前転。
すげえなおい。
通り過ぎざまに小さく「よっしゃあ!」と聞こえたのは気のせいじゃないと思う。
「無茶ブリしてごめんねー」
袖へ転がっていくネコさんに手を振り見送る。
そして慎太郎と目を合わせてアイコンタクト。
やるぞ?OK!
たったそれだけ。
でも大丈夫。
「皆様、大変大変長らくお待たせいたしました!」
「改めまして、ちりめんじゃこでーす!!」