兄妹芸人(仮)

「俺が兄の慎太郎!こちらが超絶かわいい俺の妹、明里ちゃん!」


「えー、先ほども言いましたが、こちらの兄はただのポンコツなのでもう聞いたわ!ってことを言っていても温かい目で見守ってくださいねー。自己紹介とか何回でもしちゃうので苦笑いしてあげてください。」


「明里ちゃん!いきなりアドリブとかヤメテ!お兄ちゃん臨機応変とか苦手だから!」


「お前にだけは言われたくないわ。アドリブだけで生きてきたくせに。」


「突然の冷たい瞳にお兄ちゃん泣きそう!」


およよと泣き崩れる真似をする慎太郎。
あたしなんかよりアドリブで生きてきたこいつは、どんなことがあったってなんとかしてみせる。

それこそ、ネタを飛ばしたりまったく喋れない状態になろうと、どうにかして切り抜ける男だ。

頼もしい限りだね。まったく。

とりあえずネタに戻ろう。




「……まぁ、こんな感じで兄妹で漫才やってますー。見てわかると思うんですけど、わたしがツッコミで兄が、」


「俺は人工ボケ!」


またネタ合わせと違うことをぶっこんで来るポンコツをどうしてくれよう。




「…人工ボケってなんだよ!違います。わたしがツッコミで、あに…」


「俺が人工ボケ!」


「…なぜここでアドリブをぶっこんできたのか、あたしが納得できる説明をしたら許す。」


「いや、だってさ、ネタ合わせしてる時にいつも思ってたんだけど、やっぱり俺は天然ボケじゃなくて人工ボケだと思うんだ!」


「…今じゃない!それ思ってたとしても言うの今じゃない!」


なんでネタ合わせの時に言わないの?!思ったことは口に出しちゃう系のポンコツなのに、なんでそこだけ言うの我慢しちゃったの?!

というかあんたは間違いなく天然ボケだから!ポンコツだから!

人工ボケとか新しい言葉つくってんじゃねぇ!




「だってぇ、ここで言わなきゃ明里はお客さんに俺のことを天然ボケとして紹介しちゃうじゃん。それはお兄ちゃんとても困る!」


「なんでだよ!」


「だってなんか天然ボケって馬鹿みたいじゃん!」


「全国の天然ボケのみなさんに謝れや!!」




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