兄妹芸人(仮)
「本当に明里ちゃんのことならなんでもわかるんだからね!何でも聞いて!」
…本当に何を言い出すんだこいつは。
お客さんが優しくて反応が良いからって調子に乗っているとしか思えない。
まぁ、楽しそうだからいいか。乗ってやろう。
「じゃああたしの口癖は?」
「お兄ちゃん大好き」
「あたしのよくやる癖は?」
「お兄ちゃんの手を触る」
「あたしのフェチは?」
「お兄ちゃんのにおい」
「全問不正解だ馬鹿ヤロウ。」
真剣な顔で自信満々な所が必要以上にイラッと来た。
「今のが本当ならあたしがただの変態に成り下がるだろうが。」
「とりあえず一回変態に成り下がっとこう!今だけ!今だけでいいから!」
「必死過ぎて気持ち悪いんだけどどうしよう。」
「お兄ちゃんの手触ってにおい嗅ぎながらお兄ちゃん大好きって言ってみよう!ね!」
「ね!じゃないから。気持ち悪さが爆発してるよ。なんとかして。」
「お客さんも見たいよね?明里ちゃんのデレ!」
「お客さんうなずかないで!流されないで!わたしのためにも拍手とかヤメテくださいマジで!」
どうしよう拍手喝さいだ。
逃げ場をつくらなければ。
この無茶ブリからの脱出を!
なんとかせねばとステージ上から周りを見渡すと、袖に待機するネコさんを発見!
そうか!そろそろあたしたちの持ち時間は終わりだ!
腕時計で時間を確認。記憶していたタイムテーブルを頭に思い浮かべる。あたしたちに残された時間は1分だ。
「さぁ!明里ちゃん!お兄ちゃんの準備はとっくの昔に整っているよ!」
「うるさい変態!皆様、大変残念なお知らせですが、お別れのお時間が近づいてきております。」
「え、ウソ!?あ、本当だ!でも明里のデレは逃したくない!」
「うるせえっていい加減にしろ!もう終わり!」
「そんな終わり方ってないよ!強制終了にもほどがある!」
「ごめんね皆様!もう終わり!」
「えぇー!マジで?!あ、ネコさんまだ出てきちゃだめだよ!まだ明里のデレが!」
そうこう騒いでいる間にネコさんがスケッチブックを持ってステージに出てきた。
よかったこれで無茶ブリ回避。