兄妹芸人(仮)
ネコさんがスケッチブックを渡してきた。次のステージ企画までの流れが書いてあるとありがたい。
確かあたしたちの次にはキャラクターショーがあった。ショーをやっている間は袖に引っ込めるはず。
スケッチブックを開くとそこには、『明里ちゃんのデレが見たいのでよろしく!』
「誰がやるかぁ!!!」
ネコさんにスケッチブックを投げつけてしまったが、すべてはこれを書いた人が悪い。
「なになに、次はなんて書いてあった……よしやろう!ゴーサインが出たってことでやろう!」
慎太郎がスケッチブックを拾ってお客さんに見せてしまった。逃げ場をふさがれただと…
「明里、きっとこれをやらないと次のショーには行ってくれないんだよ。つまり、ショーを待っているちびっ子たちのためにも明里は渾身の『お兄ちゃん大好き』を言わなきゃいけないってこと!」
ちびっ子を人質に取るとは非道な奴だ…
…これは割り切ってさっさとやりきるのが賢明か。
伸ばしたら伸ばした分だけハードルが上がり、さらに滑る確率も上がる。
「よし…お前もそこのお兄様たちもオジサマもちびっ子もお姉様も奥様もお嬢様も一回しかやんないから目ぇかっぽじって括目しやがれこのヤロウ!!」
ずいっと慎太郎に近寄る。
手をとり、指を絡める。
そのまま口元に手を引き寄せ、鼻から息を吸い込む。
目を見つめて。
「お兄ちゃん、大好きだよ。」
笑顔はオプションだ。喜べ変態。