兄妹芸人(仮)
「俺は、最初は確かになんとなく誘われたから始めたけど、お笑いやることは真剣に考えてた。
明里はわかると思う。俺が自分から一つのことにこんなに執着してまでやりたいって思うの、初めてなんだ。
だから、俺はやりたい。」
確かに、前のこいつは今考えるとビックリするくらい何事にも淡白だった。
興味をもってやってみても、すぐに飽きて次のものへ手を出していた。
一つだけ例外もあったが、それも訳あってやめてしまったし。
…違和感はこれだったのか。
慎太郎がこんなに熱中すると思ってなかったから、すぐやめるって言うと思ってたから、こんなに違和感があるんだ。
「なら、なおさらオレは慎太郎と一緒にやるべきじゃないと思う。オレは慎太郎に誘われたから、今までやって来ただけだ。
そんなに強い思いがあるなら、オレよりもっと相応しい相方を見つけないとダメだ。」
「本当に、もう辞めるのか?」
「辞める。オレは慎太郎を応援してる方が性に合ってるからな。」
「そっか…じゃあ、サルサソースは解散だな。」
「あぁ。ごめんな。オレ…」
「いや、いいんだ。ただ、ちょっと1人で考えたいからさ、今日は帰ってくれるか?」
それを聞いた今野くんは、静かに立ち上がり、玄関へと向かって行った。
…なんかこのうつむくポンコツが少しかっこ良く見えたのはなんなんだろう。
幻覚、だよなぁ。