兄妹芸人(仮)
ちりめんじゃこ
「慎太郎…?」
未だ無言でうつむく慎太郎に、さすがに不安を覚える。
そこまで本気だったのか。
そこまでしてやりたいのか。
それなら、あたしは…
「明里、ちゃん、…俺、ゆうきに、捨てられた…ぅわーんうぐっ!」
……やっぱり何もかもが幻覚でした。
うわーんを発動したポンコツさんには顔面にチョップをくれてあげましたとさ。
「台無しだ馬鹿野郎!」
せっかくのシリアス展開を返せ。
「だって…ゆうき、やめるって、お笑い、俺、まだ、やりたいけど、…どうしよう…」
目をウルウルさせ、鼻をグスグスと鳴らし、片言も片言に話す兄には本当に高2男子なのかと問いたい。
美形だからってなにしてもかっこ良いだ可愛いだで許されると思ったら大間違いだぞ。
てか美形である前にお前はあたしの兄貴だろ。非常に不本意だが。
「簡単に泣くなって前も言ったっしょ。」
あーぁー全く。
ぐしぐしと袖で目をこすり、頭もぐしゃぐしゃにしてやる。
「はぁ……あたしの兄貴なら、こんなちっぽけなことで簡単に諦めたりしないよな?」
なんであたしがこんなこと言わなきゃなんねーんだ。
でも…
慎太郎がやりたいことなんだろ?
泣くほど本気なんだろ?
「諦められないならやれ。泣く程やりたいならやれ。」
最初にストップをかけたのはあたしだけど、それはすぐ投げ出すと思ったからだよ。
「お前が本当にやりたいと思ったなら、やりなよ。」