兄妹芸人(仮)
―――

「おねーさん、これ貼らしてくださいな。」


その日の帰り道。



もはやネタ作りに常連になった喫茶店やファミレス、通い詰めているコンビニ、お世話になってる美容室などなどにチラシと一緒に作ったポスターを貼らせてもらう。

一緒にチラシも置かせてもらう。



ファミレスやコンビニはアウトだろうと思っていたが、そこは兄貴のツラの良さと日頃のコミュニケーションでカバーだ。



「あ、明里ちゃんにお兄さんも!ポスターできたの?」



今は馴染みのショップ。

おねーさんがとっても気さくでセンスも抜群で大好きなのだ。



「うん。ここ中高生も大学生も結構来るでしょ?だからチラシもいっぱい置いてくな。」


「もう完全に集客しか頭にないのね。

よし!じゃあギブアンドテイクにしよう!
これ置いて、配ってやる代わりに、ここの服着て一緒に写真とって!で、サインも書いてって!」



「えー、やだよーハズイし。」


サインとか何様だよって感じじゃーん。



「明里!せっかくだから撮ってもらおうよ!みんなに顔知ってもらおうよ!」



なんでお前はこんなにもポジティブなんだよ。


まぁ、顔をさらすことにはなるが、集客につながるなら仕方ないか…

せっかくポスターに顔載せるのは阻止したのに。




「おし。じゃあ撮るからしっかり集客してよね!」


「おねーさんに任せなさい!じゃあそうと決まれば早速着替えて!あたしが選ぶから!」



バタバタと店内を駆け回るおねーさん。


あなた他のお客さんもいるのに放って置いていいのか。

お客様は神様だぞ。



「あ、あの!」


む?





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