抱いた女と犯した男【完】
心地いい。落ち着く。不思議と。
何気なく垣之内さんを見れば、目が合い、そうすれば彼は、前から決まっていたことのように口を開いた。
それほどすんなりと。
――ああ、タイムリミットはすぐ近い。
この優しい空間は壊れてしまう。穏やかな時間は終わってしまう。
「……ハナちゃん」
「……」
「……もう、いいよ」
――全て分かっていた、彼は。
「……スイカ」
「ん」
「……食べたいんじゃないの?」
「……もう、いいよ」
不思議だ。いざとなれば、怖くなっている。
ここに来てすぐに足元に置いたカバンを手で手繰り寄せ、胸に抱く。
垣之内さんは寂しそうに笑うだけで、逃げることも、私に近づくこともしない。
――もう、いいよ。
彼はそう言った。