抱いた女と犯した男【完】
「……多分」
「え、多分て」
「カレーなんて、とりあえずルーに野菜ぶちこんで煮れば、なるようになるんですよ」
「(……まじですか。)」
今度は垣之内さんの方が絶句している様子を尻目に、じゃがいもを刻む。凹凸があってなかなか切りにくいな。
料理をするのも、包丁を握るのも久しぶりだ。
それなのに、今日会ったばかりの男の家でカレーなんかを作ったりしちゃってる。
初めて会うはずなのに、なんだか昔からの知り合いだったような。
――変な感じ。
「……ハナちゃん」
「あ、玉ねぎ切れましたか?」
「いや、まだだけど……。なんでじゃがいも、……そんなに薄っぺらいの?」
「え?」
彼の視線を目で追えば、薄っぺらくスライスされたじゃがいもたち。間違いなく私がやったものだ。けど。
「……変ですか?」
「いや、変、っていうか……。某ポテトチップスみたいだねえ」
某の意味はどこにあるのだろうか。