空蝉の光 -桜花乱舞-
【一哉】


『助けてよ…、一哉君…』



俺は突然聞こえた声に目を開け、勢いよく身体を起こした。



周りは既に明るくなっていた。



俺が宿に帰って来たのは夕暮れ。



どうやら、日付が変わってしまう程眠ってしまったらしい。



俺は部屋をぐるりと見渡した。



畳一面に服やら雑貨やらが無残に散らばっている。



昼間のことで苛立ち、やり場のない感情を晴らすように荷物を散らかし、そのまま眠りについたのだった。





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