冷たい旦那様
悠人side
《悠人side》
あり得ない。あり得なかった。
夜、会社から帰ろうとすると、入り口で土下座する部下が一人。
「本当にすみませんでした!!間違って小崎さんのパソコンのメモリ消してしまって……っ本当に、本当にすみませんでした!!」
すみませんでした!!を繰り返し、何度も何度も頭を下げる部下。
頭が真っ白になるって、こういう事なんだろうか。
俺は一目散に駆け出し部署に戻り、ついさっきまで使っていた自分のパソコンを見た。
確認する……が、どこにも取引先とのデータが入ったファイルは見付からなかった。
半分どこかで、嘘だろ?と思う自分がいた。けれど、表示された文字は【ファイルが見付かりません】
愕然とする。もうどうしたって元には戻らない、大事な取引先との情報。
力無くイスにもたれる俺の元に、部下が走って来た。