冷たい旦那様
「…ねぇはる…」
「…うるせーなっ!!邪魔なんだよ!!」
しつこい綾に………つい、荒げてしまった声。
後ろで綾が大きく肩を揺らしたのが分かった。
「…あ…ごめ…私…」
「………」
「――――…っ」
涙を一粒流し、逃げるように家を飛び出した綾。バタンッ!というドアの音が、空しくこだまする。
……あんなに怯えて、傷付いてる綾の顔を見たのは初めてだった……。
俺、何してんだよ……。
「…くそっ」
自分にイラついて、上着をベッドに投げ付けると部屋を出た。
綾を追いかけようと、リビングの前を通った時……
……ふわりと香った、匂い。