冷たい旦那様
……何だ?
爪先の方向を変え、リビングへ向かう。ドアを開けると、そこにはテーブルに隙間無く並べられたたくさんの料理があった。
えっ……これ……。何で、こんなご馳走?
料理は全て、俺の大好物。そばに寄ると、食欲を誘うこおばしい匂いが鼻を掠めた。
まさかこれ、全部綾が一人で?
呆然と料理を見つめていると、ふと目に入った、黒の大きな紙袋。
綾がいつも座る席の横のイスに置かれたそれを、手に取り中を覗いて見る。
入っていたのは、手の平サイズの小さな箱と、その何倍もの大きさの、包装された柔らかい何か。
それらを慎重に袋から取り出していると、床に落ちた一通の手紙。
紙袋をイスに置き、手紙を拾う。
「……“悠人へ”?」
表には俺の名前、裏には“綾より。”の文字。
綾の好きな水玉模様の便せん。俺はそっと封を開け、手紙を読んだ。