冷たい旦那様
特別な日
「…綾」
どれくらい、そうしていたんだろう。
泣き叫ぶのも疲れてしまった頃、静寂の空間に響いた愛しい人の声。
ゆっくりと声のした方を見れば、そこには肩を上下に揺らして荒い息のまま、
私を見つめる悠人の姿。
驚いてるのに、疲れて声も出ない。
「…綾、ごめんな」
「……え?」
悠人の大きな腕に抱き締められ、思考回路が停止する。
悠人の心臓の音が、心地よく耳に伝わって来る。
「…は…ると?」
「…怒鳴ってごめん…。八つ当たりした」
「………」
「本当にごめんな……。今までたくさん我慢させて来たよな……。綾、お前の気持ち、俺に教えて欲しい」
悠人が体を離して、私を見つめる。
久し振りに見た、こんな至近距離での悠人。
甘酸っぱい想いが込み上げて、また視界が歪む。