冷たい旦那様
差し出された手を握り、ベンチから立つと、そのままその手を引かれて歩き出した。
「腹減ったな」
「うんっ。…あっ。料理冷めちゃってるかな~?」
テーブルに出しっぱなしで来ちゃった。温め直して食べよう。
……久し振りに、悠人と一緒に晩ご飯を……。
「かもなー。……あ、そうだこれ、ありがとうな」
そう言って悠人が見せたのは、右手の薬指に付いた指輪。
えっ……気付いたの?
「手紙もバッチリ読んだ」
「うっ……あはは」
恥ずかしっ。
冬なのに頬が火照って、空いてる方の手でうちわにしてあおぐ。
悠人はクスクス笑い、意地悪な笑みから急に真剣な表情に変わって。
「綾」
「はっはい!?」
うわっ。声裏返った……。
思わず背筋をピンッと伸ばして、悠人の次の言葉を待つ。
冬の真夜中。珍しく、暖かい風が吹いた時、悠人がフッと微笑んで。