兎の方向⇄
第一章
「……はい、分かりました……お大事にして下さいね?」
ガチャンッ
兎佐美は受話器を置いて、机に広げたメモ用紙に何かを書き留めていく。
少しして顔を上げて、近くにいる白衣の男に声を掛ける。
「先生、桜さんも本日はお休みだそうです…」
「そうですか……ご苦労様です、兎佐美さん」
眉根を下げて困ったように言う兎佐美の方へ振り向き、柔らかい笑みを浮かべたのはここの動物病院の院長、湊羽達樹だ。
まだ20歳と言う若さでここの院長を勤める。
顔はイケメン、性格も良し。
モテないはずがない。
動物病院では、密かにファンクラブまで出来る始末。
兎佐美は、そんな先生に補佐を任されていた。
「どうしましょうか……本日は定期検診の日でしたよね?」
「ええ…今日はそうですね………」
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