兎の方向⇄
「どうぞ………」
コーヒーを作り終えた兎佐美は達樹の前にカップを差し出す。
「サンキュ……」
達樹は少し笑みを浮かべながらそれを受け取り、飲み始めた。
兎佐美はいきなり作れと言われた理由が分からず、首を傾げてそれを見ていた。
「……相変わらず美味いな……」
「あ、ありがとうございます……//」
兎佐美は褒められて少し照れながらお礼を言う。
「この俺が認めてんだ……自信持て…」
「はい………//」
達樹はコーヒーを口に運びながらふと兎佐美に問う。
「そういやお前…飲み会に着てく服あんの……?」
「え…どうしてですか?」
「いや…俺お前が私服着てんの見た事ねぇから……」
兎佐美は少し考えて、達樹から目を逸らす。
「………ねぇんだな…?」
「そ、そんな事ないですよ……?」
あからさまに焦っている兎佐美は見て、達樹は楽しそうな笑みを浮かべた。
それから飲みかけのコーヒーを机の上に置き、立ち上がる。
達樹が向かった方向は、兎佐美の部屋がある方向。
兎佐美の顔がサァ......と青くなる。
「ちょっ、ちょっと待って下さい先生!!//ダメですっ私掃除してないからダメッ!!//」
「入るぞ」
兎佐美の制止の声を無視して部屋のドアを開ける。
そこで見た兎佐美の部屋は。
「……女の部屋とは思えねぇ………」
物が錯乱し、足の踏み場がギリギリある程度。
簡単に言う、散らかった部屋、だ。
「だ、だから片付けてないって言ったじゃないですかっ……!!///」
「いや、それにしてもこれはねぇだろ……」
達樹は大きく溜息を吐き、兎佐美を部屋の中に入れて、自分は外に出る。
「予定変更……兎佐美、俺に見られて嫌な物だけ片付けて来い……」
「え……何で………」
「いいからさっさとしろ…俺に下着とか見られてもいいのかよ……?」
「すっ、すぐに片付けますっ!!///」
急いで部屋のドアを閉め、兎佐美は見られたくない物だけを雑に片付けた。