兎の方向⇄
「困りましたね………」
兎佐美は辺りを見渡しながら呟く。
今、この動物病院には達樹と兎佐美の2人きりだ。
今日来るはずの人たち全員が風邪などで休み。
しかし、この状況を楽しんでいる場合ではなかった。
定期検診があるからだ。
「私1人で行って来ますよ。兎佐美さんは病院をよろしくお願いします」
「お1人で大丈夫ですか…?」
「大丈夫です」
達樹はニコッと笑い、定期検診の用意を手に持つ。
「留守はお願いしますね、兎佐美さん」
「はっ…はいっ!!」
大きく頷いた兎佐美を見て、満足そうに微笑んで達樹は病院を出た。
その後のある訪問者によって、兎佐美の人生は大きく狂いだしたのだったー……