兎の方向⇄
カタカタカタカタ...
1人しかいない動物病院には、兎佐美がパソコンのキーを叩く音しか聞こえない。
「………ちょっと休憩しよ…」
そう呟いて、コーヒーメーカーのスイッチを入れる。
その時。
チリン...
小さく鈴の音が聞こえた。
「ん…?」
兎佐美は不思議そうにドアの方へ振り返るが、誰もいない。
「気のせい……かな……」
兎佐美はまたコーヒーメーカーに目を向ける。
「ニャァ………」
「え、猫……?……あ……」
ドアの下を見ると、そこには一匹の猫がいた。
青い毛に額の所には白い星マークがついた、見かけない猫。
「迷い込んじゃったのかな?」
兎佐美は猫の近くでしゃがみ、頭を撫でる。
猫は気持ちよさそうに目を細めて大人しくしていた。
「すいません………」
頭上から聞こえた声に兎佐美は頭を上げ、驚いた様な表情を浮かべた。