兎の方向⇄

「ええ、いつも嬉しそうに話すので会ってみたかったんですよ、兎佐美さんに」


頼輝は兎佐美に近付き、まじまじと兎佐美を見つめる。
少し照れたように後退りした兎佐美を見て、頼輝は微笑む。


「なるほど………達樹が気に入るのも分かります……」

「………?…///」


兎佐美に聞こえない位の声で呟き、兎佐美にもう一度視線を向ける。


「あ、あのっ…///」


一刻も早く自分を見るのを止めて欲しい兎佐美は、後ろのコーヒーメーカーに目を向けながら言う。


「…コーヒー……お飲みになられませんか?」

「コーヒー…ですか?」

「はい。さっきのお詫び…って訳じゃありませんが、コーヒーだけは先生に誉められるんです」


苦笑いをしながら言った兎佐美の言葉に、頼輝は驚いたような顔をした。


「達樹がコーヒーを誉めたんですか…!?」

「え、ええ………」

「へぇ……あの達樹が…………」

「そ、それがどうかしましたか……?」

「いえ、何でもありませんよ。それじゃあ、一杯お願いしてもよろしいですか?」


微笑んだ頼輝を見て、兎佐美は頷いてコーヒーをもう一杯作り始めた。

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