ARCADIA
◆1章
定められし出逢い(1)
風の強い日だった。
全寮制高校に通う由愛たちも、長期休暇の際には自分の家に帰ることが許される。冬休みに入り、家に帰ってきた由愛だが、ふと窓の外を見てぎくりとした。
窓の外を見ると、そこに一人の男がいたのだ。
男は何をするでもなく、ぽつんと家の前で立ち止まり、由愛の部屋のある二階を見つめていた。誰かを待っているように。昨今問題になっているストーカーかと思えるぐらい、その行動は不自然だった。
そして...彼の瞳と自分の瞳が...確かに合った――と思ったその時、ふっ、と突然、目に映る光景が変わる。
「なに……?」
呟いたその瞬間、言いようもない熱い感情がこみ上げてくる――
『キミ ハ ソコニ イルベキ ジャ ナイ』
頭に響く低い声。
見知らぬようで、でも懐かしい――
差し伸べられる手。
『私はあなたを知っている――?』
なぜかそう思った。
自分の思考に疑問を差し挟む間もなく、我に返ったときにはもう、そこに彼の姿はなかった。
何気なく自分の顔に手をやった由愛は、「え?」と小さな声を上げた。その手を自分の目の前にかざすと、濡れていることにはっとする。
もう一度確かめるためにゆっくりと指で自分の頬を撫で、初めて自分が涙を流していることに気づいた。
「なに、今の……何なの?――私、泣いてる?どうして?」
その問いは、風の音にかき消された。
全寮制高校に通う由愛たちも、長期休暇の際には自分の家に帰ることが許される。冬休みに入り、家に帰ってきた由愛だが、ふと窓の外を見てぎくりとした。
窓の外を見ると、そこに一人の男がいたのだ。
男は何をするでもなく、ぽつんと家の前で立ち止まり、由愛の部屋のある二階を見つめていた。誰かを待っているように。昨今問題になっているストーカーかと思えるぐらい、その行動は不自然だった。
そして...彼の瞳と自分の瞳が...確かに合った――と思ったその時、ふっ、と突然、目に映る光景が変わる。
「なに……?」
呟いたその瞬間、言いようもない熱い感情がこみ上げてくる――
『キミ ハ ソコニ イルベキ ジャ ナイ』
頭に響く低い声。
見知らぬようで、でも懐かしい――
差し伸べられる手。
『私はあなたを知っている――?』
なぜかそう思った。
自分の思考に疑問を差し挟む間もなく、我に返ったときにはもう、そこに彼の姿はなかった。
何気なく自分の顔に手をやった由愛は、「え?」と小さな声を上げた。その手を自分の目の前にかざすと、濡れていることにはっとする。
もう一度確かめるためにゆっくりと指で自分の頬を撫で、初めて自分が涙を流していることに気づいた。
「なに、今の……何なの?――私、泣いてる?どうして?」
その問いは、風の音にかき消された。