【短編】意地っ張りなキミに。
――ガタッ!
俺は勢い良く立ち上がった。
そして、財布とケータイだけを持ち、急いで部屋を後にする。
「母さんっ!ちょっと出掛けてくるっ!!」
「えっ!
出掛けるって今から!?
どこに――…」
驚く母親の言葉など最後まで聞かず、
俺は玄関を飛び出した。
外へ出た瞬間、
上着も羽織っていない俺を冷たい空気が包み込む。
だけど、そんなこと気にしている場合ではなかった。
やや薄暗い空の下、駅までの道のりを急ぐ。
『沙羅に会いたい』
ただ、その想いだけを乗せて。
時刻は…
夕方4時を迎えようとしていた――…。