【短編】意地っ張りなキミに。
5.再会の時
人通りもなく、少し上り坂になっている細道。
家を出てから約3時間もの間電車に揺られ、ようやくここまでたどり着いた。
今、沙羅が暮らしているこの街は、俺の住む街とは違い周りに畑が多い。
――そう言えば、夏休みに来た時、沙羅が言ってたっけ。
「この辺りはね、歩夢と違って優しい人が多いの。
畑で取れた野菜とかお裾分けしてくれるんだよ」
確か一言余計なその発言にムカッとして、言い合いになったんだよな……。
あの時の沙羅の拗ねた顔を思い出し、頬が緩む。
だけどその一方で、沙羅の家に近付く度に胸のざわつきが増していた。
それはもう……抑えられないほどに、膨らんでいた――…。