【短編】意地っ張りなキミに。
「歩夢くん…久しぶりね。
びっくりしたでしょ」
医者を見送った後、沙羅の母親が俺を振り返って言った。
「いえ、俺の方こそ急に来てしまってすみません」
俺の言葉に彼女はゆっくりと首を横に振った。
「いいのよ。
沙羅のことだから、変な意地張ってろくに連絡も取ってなかったんでしょ?」
「へ……?」
変な意地――…?
その時の俺はよほどおかしな表情をしていたに違いない。
それを見た沙羅の母親は、困ったように眉毛を下げて笑うと、
今までのことを俺に説明してくれた。
それは……
俺が全く予想もしていない……
意地っ張りな沙羅がずっと隠し続けていた、
真実だった。