【短編】意地っ張りなキミに。
それからは、沙羅の母親に代わり、佐竹さんが話しはじめた。
沙羅が、自分の成績が上がるまで、俺との連絡を絶つと言っていたこと。
2年前の約束を守るために、寝る間も惜しんで勉強していたこと。
そして――…
昨日、姉貴が見た男の人の正体も佐竹さんであること。
どうやら沙羅の通う予備校と佐竹さんの自宅が近いらしく、
家庭教師のバイトに向かう途中、よく帰宅する沙羅と遭遇するのだそうだ。
全てを聞き終えた俺はそっと呟いた。
「この意地っ張りめ……」
「君もだけどね」
すかさず聞こえて来た佐竹さんの言葉に、みんなで笑い合う。
一方の沙羅は、きっと昨夜も殆んど寝ていなかったのだろう。
気持ち良さそうに、スヤスヤと寝息を立てて眠ったままだった。