【短編】意地っ張りなキミに。
「私、寂しかったの。
歩夢と離ればなれになって。なかなかこっちの環境にも慣れなくて……。
ケンカ相手の歩夢がいないだけで毎日が脱け殻みたいだった」
「うん……」
「そんな生活に戸惑ってるうちに、勉強にもついていけなくなっちゃって。
成績もどんどん下がるし、模試も解けないし。
一緒の大学に行こうって言い出したのは私なのに、全然思うようにいかなくて……」
――だんだん、沙羅の瞳に涙が浮かんでくるのが分かる。
それでも沙羅は、一生懸命に話を続けた。
「毎日来る歩夢からのメールだけが楽しみだった。
歩夢も頑張ってるんだから、私も頑張らなきゃって思えた。
でも……
歩夢からB判定が出たってメールをもらった時、歩夢がますます遠くなっちゃう気がして。
そうしたら凄く不安になった。
でも何も知らない歩夢にそんなこと言えなくて……それで……」
――次の瞬間……
ぎゅっ……!!
俺は沙羅の小さな身体をおもいっきり抱き締めていた。
涙でグシャグシャになった沙羅を、
これ以上、見ていられなくて――…。