プレシャス
でも…
…助かった。
あの大きな音のおかげで、この二人の前で泣かずにすんだ。
「とりあえず飲み直し~」
そんな大造の声に
みんな仕切り直そうとしたその時
「…?」
あたしの足元に何かが当たるのを感じた。
テーブルの下を覗いて見ると
「…ティスプーン」
「あ、きっとアレじゃない?さっきの」
「あ、あぁアレ」
あの時、転がって来たのかな
カウンターを見るとさっきの彼が落としたモノを拾い上げてるのが見えた。
「ちょっと届けてくる」
「志穂っ、イケメンかよっく見てきてね?」
「あはは、頼子、懲りないなあ、圭介怒るわよ?」
ついでに
化粧も直しとこ
そう思いながら
ゆっくりとカウンターに足を向けた。