プレシャス









「さっきはすみません」


「あ……いえ」










上から聞こえるのは深みのある静かな声。





なんか…
品定めみたいに見ちゃってた分、ちょっと顔をあげづらい。

でも








「あ、これ…」








おそるおそるさっきのスプーンを差し出すと

あたしを見下す優しげな黒い瞳が見えた。










「あぁ、すみません」









ゆっくりと差し出される長い指。


ゴツゴツした男の子の手なのに

なんだかしなやかに見えて。





微かに触れた指先
ほんの少し緊張する。









この人…

髪の毛であんまり顔見えなかったけど
目、きれいだし整った顔立ちしてる…






たぶん
ヤボったい前髪を切ればきっとモテるんだろうなあ







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