プレシャス
あ、また…
最近 気が付いた。
いつも友達と集まる小さなショット·バー。
薄暗い照明と微かに流れるR&B
ちょっとだけコジャレてて、
でも、なんか気さくで居心地良くて
何かあれば
いや、何もなくても夜になれば仲間と一緒に顔を出してる
あたしのお気に入りのお店。
今日もつまらないゼミが長引いて、みんなで愚痴をこぼすのを名目にここのドアを開けたんだ。
「なんかみんな疲れてるねぇ」
「マスター聞いてよ、今日なんてホントは午前中で終わる予定だったんだよ?なのに~」
「そりゃ災難だ。じゃあ特別に今日は一杯奢るかな」
「やったあ。マスター、気前いい~」
あたしはすでにここの常連。
週の半分は顔出してるからか、マスターがいつも出してくれるのは
あたし好みに合わせた薄めのカクテル。
いつもの指定席に腰をかけ、出してくれたカクテルに口をつけようとした
その時だった。
「………」
「ん?志穂なしたの?」
「あ…ううん?なんでもない」
“なんでもない”
確かに
何かあるわけじゃない
もしかしたら気のせいかもしれない
でも…
…ずっと感じてる
微かに
ホント微かな。
あたしの斜め後ろからささやかな
そんな視線を。