プレシャス







微かに


まるで


ほんの少し
指先で軽く触れるような



強くない
鋭くない

でも
背中に感じる


そんな視線に気が付いたのは






今年に入って初めてお店に顔を出したあの夜だった。











正月休みが明けて、帰省してた仲間が徐々に戻りはじめて。

ちょっと遅いけど新年会しよって、いつものメンバーで集まったあの夜。





「んじゃ、あけおめ~っ」


「あはは、ことよろ~っ」







仲間の中で、
一番騒ぐのが大好きな大造がジョッキを掲げて


今頃かよって圭介が頼子と笑って乾杯。





たいして久々でもないのに、なんかみんなはしゃいでる中で。








「ほらっ、志穂っお前もカンパーイ」


「あ…ん、カンパーイ」








あたしは



あたしだけ…その空気に溶けきれてなかった。





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