プレシャス
「……ちょっと課題いっぱいで終わんなくて……それだけ」
ありがとねって、これ以上聞かないでって笑う
そんな自分の顔
嘘っぽくてきっとバレバレ。
でも
なんか…
これ以上坂井君の瞳を見つめたら
…一人でいられなくなりそうで
寂しいって…
言ってしまいそうで…
「電車来たし…それじゃあ」
またねって
顔をそむけて繋がれた手をほどこうとした
…その時だった
目の前を通り抜ける先頭車両に
一瞬で瞳を奪われた。
巻き上がる風に
ゆっくりと減速する電車の窓の奥
大学とも
あたしの家とも
ぜんぜん違う方向行きのホームの片隅で
昼間の…
あの女のコを引き寄せて唇を重ねる
…修の姿が見えた